2024/02/19
8人用3時間¥4,000
青空に突き抜ける快音が、僕たちの青春に終止符を打つ音だった。
揺らめく陽炎、頬に滴る汗の味、場内を震わせるブラスバンドのメロディと、それをかき消さんばかりの大歓声。
球場に犇めくすべての視線を一身に浴びながら、その白い放物線は高く、遠く、力強く伸びていく。
呆然と、それが総立ちの観客席へと飛び込んでいく光景を、僕たちはただ見送ることしかできなかった。
九回裏の逆転ホームラン――僕たちのサヨナラ負けだった。
――県大会の決勝戦。甲子園への切符をかけた大一番である。
その幕切れにふさわしい劇的な決着に沸く場内で、最初にそれに気が付いたのは誰だったのだろうか。
球場の真ん中で、あいつが倒れていた。
エースで四番でキャプテンのあいつ。僕たちの青春の常に中心にいたチームメイト。超高校級の天才と称されるスタープレイヤー。夏木草介が、マウンドの上で倒れていた。
炎天下による熱中症に思われたその悲劇は、やがて意外な展開を見せ転がり始める。
夢破れた少年たちの物語は、まだもう少しだけ終わらない――。